温泉☆PANIC+α







「んっ・・・ん〜・・・」

「あっ!起きた!!」

「ちょうどいいタイミングですね。」

「ホンじゃもう一人前追加な♪」

「・・・勝手にしろ。」

「・・・ほえぇ?」

寝起きのまだ覚めやらぬ状態でくるりと周囲を見渡す。
悟浄の家でもなく、三蔵のお寺でも無い。
落ち着いた佇まいの部屋の真ん中にひかれた布団に寝ているあたしの両隣に悟空と八戒、窓辺で煙草を吸っている三蔵、そして何やら部屋にいるお姉さんと楽しそ〜に話をしている悟浄。

オハヨー!!」

ドーンと体当たりをするように飛びついてきた悟空の体を受け止めながら、一体ここは何処なんだ!?と言う思いを込めて隣にいる八戒の顔を見ると、いつものように爽やかな笑顔で今の状況を説明してくれた。

「ここは三蔵のお寺から少し離れた場所にある温泉旅館なんです。」

「温泉!?」

中国にも温泉ってあるのか?と、考えながらも口には出さず八戒の話の続きを聞いた。

「この近くに古いお寺がありまして、そちらへ三蔵が説法に赴くので僕らもご一緒させて頂いたんです。」

「・・・へぇ〜」

ご一緒・・・って言ってるけど、多分何時もみたいに八戒が運転手で悟浄一人家に置いとけないから結局一緒に来たって言うのが正解だろうな。

「それでそのお寺での説法を終えたら三蔵の説法にいたく感動した大僧正さんが、こちらの温泉旅館の手配をして下さって現在に至るってカンジでしょうか。」

「ふーん・・・でも三蔵って説法で出掛けるの面倒だって言って結構断ってなかったっけ?」

あたしの発言を聞いて何故か三蔵を除く他の三人が一斉に笑い出した。

「な、何笑ってんの!?」

さっき迄あたしに抱きついていた悟空は布団の上でお腹を抱えて笑ってるし、悟浄は悟浄で壁に手をついてヒーヒー言いながら笑ってる。

「三蔵は案外温泉とかそう言う場所が好きなんですよね?」

にっこり笑顔の八戒とは対照的に何処か不機嫌な様子の三蔵・・・眉間のしわがいつもより一本多い・・・気がする。

「・・・悪いか。」

うっわぁ・・・そんな睨まなくてもいいじゃん!って言うかあたし悪く無いのにっ!
反射的に側にいた八戒の背中に隠れると、まるで小さな子供を慰めるように頭を撫でられた。

「この宿の露天風呂はとても有名らしいですよ。」

「混浴じゃねぇのが残念だけどな♪」

火のついていない煙草を口にくわえた悟浄が背後からあたしを抱きしめるような形でのしかかってきた。

「こ、混浴!?」

「何?それとも貸切風呂かなんか借りて二人っきりで・・・おわぁっ!!」

悟浄が最後まで言葉を発するより早く八戒が悟浄の腕からあたしの体を助け出し、その瞬間三蔵の銃弾が悟浄の頬をかすめ、それを避けた悟浄のお腹の上に悟空の拳が見事ヒットした。



見事としか言いようの無い連係プレー・・・。

「ゲホッッ!何すんだよこの馬鹿ザルに生臭坊主!!」

さすがにみぞおち近くに悟空の拳が入ったのかちょっと涙目の悟浄・・・ううっ、痛そうだよ。

に触んなよ!このエロ河童!!」

すぐにあたしの側にやってきて腕を絡ませると、悟浄に向かってベーっと舌を出してちょっと怒った様子の悟空。

「手が滑っただけだ。」

しれっとした顔で銃を懐にしまい、まるで何も無かったかのように机に置いてあった新聞に手を伸ばす三蔵。

「三蔵、手を滑らすならがいない時にして下さいね。一応。」

そして、しっかりとあたしの腰に手を回して腕に抱きかかえたままの状態で冷気をともなった笑顔をみせている・・・八戒。
えっとこの場合あたしはどうしたらいいんでしょう?
そんなあたしを助けるかのように、タイミングよく部屋の扉が叩かれ上品そうな女性が部屋に入って来た。

「失礼致します。お夕食はお部屋でなさいますか?それとも大部屋でなさいますか?」

宿の女将さんかな?何言ってるかわかんないけど、この張り詰めた空気は変えられそう。
小さくため息をついた八戒が三蔵の方を振り向いて声を掛けた。

の事もありますし、部屋で構いませんよね。三蔵。」

「・・・そうだな。」

「それでは此方にご用意させて頂きますね。5名様分で宜しいんですよね?」

「えぇ、お願い致します。それからお櫃だけ人数分頂けますか?」

「「は?」」

思わず女将さんと声がはもってしまった。八戒笑顔で何言ってるの!?

「食べ盛りの人が一人いるので・・・」

あぁ、悟空の事か。
確かに普通の旅館の食事、しかも1人分だけで悟空が満足するはず無いよね。
お櫃1つじゃあっという間に無くなっちゃうからとりあえずいっぱい貰っとけ・・・ってそう言うワケか。
チラリと視線を後ろにいる八戒に向けると、あたしの視線の意味を悟ったのかにっこり笑って口元に指を当てていた。
女将さんは一瞬呆気に取られた様子だったけど、流石プロ。
八戒には負けるけど綺麗な笑顔で頷くとすぐに部屋の扉を閉めて出て行った。





それから暫くして、数人の人達が次々に豪華な料理を運んで来て部屋の中はあっという間に小宴会場のようになってしまった。
お誕生席に三蔵が座ってその隣にあたし、八戒。
あたしの向かいに悟浄、その隣に悟空って形で座って豪華な食事をお腹いっぱい食べた。
ちなみにお櫃は人数分しっかり山盛りにしてもらったはずなんだけど・・・結局足りず、お櫃2つばかりのお替りを貰ったのは内緒の話。





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・・・最近オマケが意味不明になっている気がする(苦笑)本当にオマケなのか!?
温泉話の前置きとして書いたんですが、上手く繋がらなかったのでオマケにしちゃいました(おいっ)
皆が温泉旅館にいたらどうするかなぁとか考えながら書いた記憶があります。
どっちにしろ、騒がしい事に変わりは無いでしょうが。
・・・あ、ちなみにどうして寺のお坊さん達が三蔵へ旅館を世話したのか何て言うのはご都合主義ですので深く考えないようにv